舞踊作家協会30周年記念公演の感想

ライムライトの仕事部屋
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先週の金曜日に舞踊作家協会30周年記念公演が、無事終了しました。

僕はこの公演で上演する父の作品《鷹の泉2024 獏の青》に映像制作及び上映オペレーションで参加しました。

じつはこの作品以外にも、《電車男》という別の作品にも上映オペレーションで参加しているけど、こちらは映像は制作していない。

おかげさまで満員御礼で公演を終え、何人か僕を知っている人にも声をかけていただきました。どなたからも好評をいただき、当日お越しいただいた方には心からの感謝を申し上げます。

僕も本番ではじめて父以外の作品をすべて見ることが出来たので、公演の感想を書いておこう思います。

公演全体の感想

今回の公演は2部構成になっていて、前半が「日佛友好コンサート」と題して、フランスの音楽家による生演奏を交えた3名の振付家の作品と、音楽家達だけによる演奏があり、後半が父の作品の上演という順番でした。

まず、このフランス人音楽家達による演奏がとても素晴らしかったです。フランスの現代音楽界で活躍している作曲家パスカル・ザハロによる作曲とヴァイオリン、チェロ、ピアノによる演奏はエネルギッシュで、ちょっとジブリ映画みたいな感覚もあって、親しみやすさも感じました。

彼らと共演する振付家の作品は中国舞踊、モダン、バレエとバリエーション豊か。

幕間には舞踊作家協会設立メンバーである雑賀淑子さんによる挨拶が行われ、舞踊作家協会の設立の経緯を伺いました。30年前のバレエ業界は、名のあるダンサーの元にお客さんが集まる状況で、あまり振付家が日の目を見ることがなかったこと、ジャンルを超えて振付家たちが作品を発表できる場を作りたいという思いで、協会を設立したというお話でした。

そのような心意気は本当に素晴らしいと思います。

一方で、上映作品の質をどう担保していくのかは、課題のように感じました。過去の舞踊作家協会で上映された作品を振り返ると、素晴らしい作品もある一方で「?」な作品も正直なところ、結構ありました。

これは作品の質もさることながら、例えばバレエ好きなお客さんは日本舞踊のお作法は知らないわけで、異ジャンルの踊りをお客さんがどう楽しめば良いのか、もう少しパンフレットなどに説明があっても良いと思う。

聞けば上演作品は舞踊作家協会に所属する作家の自薦、他薦で決められていて、上演するのに審査はないようです。これはサロンの厳格な審査基準に反発して、芸術家達が自由に作品を発表できる場としたフランスの印象派展のようなものだと解釈すれば、理解できます。

しかし、娯楽の少なかった19世紀のフランスと比べて、現代は娯楽に溢れています。特に若い世代の可処分時間は、テレビや映画や演劇、芸術鑑賞に加えてアマプラやNETFLIX、TikTokやYouTubeに奪われています。その中で、わざわざ足を運んで舞踊作家協会の作品を観に来てもらうにはどうすれば良いのか、これは舞踊作家協会に限らず、あらゆる芸術やエンターテイメントが、真剣に向き合わなくてはいけない課題です。

《鷹の泉2024 獏の青》の感想

良かったこと

なんと言っても、これまでにないアプローチで映像を作り、上映する機会を与えてもらったこと、これが一番有難かったです。結果として、AIによる動画生成の得意・不得意やクセも理解できましたし、作成した映像が舞台上で踊りや照明と相まって相乗効果を生み出すことができる大きな手応えを感じることができました。

また、鷹を演じられた元ドイツ・カールスールエ州立バレエ団の菊池桃花さんの踊りも、気高く美しかったです。

美しい鷹と鷹を追う青年獏の後ろに砂漠、荒地、森、霧に包まれた川が現れる。
水の精が棲まう幻想的な泉。鷹を追った獏はこの泉に辿り着く。
今後の課題 -1- プロジェクターの位置

課題は大きく二つありました。ひとつ目はプロジェクターの設置場所です。通常、プロジェクターを使う場合には、舞台の正面か背面から映します。今回はその両方ができませんでした。背面はこの劇場の構造上の問題なのでどうすることもできません。前方から映す場合は手前のダンサーに光が当たらないようにする必要があるため、どうしても小さくなります。

これはある意味折り込み済みだったのですが、判断が難しかったのは当日のチケットの売れ行きが良く、席数を確保するために舞台正面の席を譲り渡し、客席やや上手の通路脇スペースにプロジェクターを移動したことです。

斜めから光を当てると、映像が歪むだけでなく、反対側、つまり下手側の席の人には映像が見えにくくなってしまいます。抽象的な映像なので、多少見えにくくても伝わるとはいえ、上手のお客さんと下手のお客さんで同じお金を払っているのに異なる体験を与えることになるので、もしこれが父の作品だけの公演なら頼まれても正面の席を譲り渡すことはしませんでしたが、他の作品を楽しみに来ているお客さんもいらっしゃる今回の公演では、お譲りすることにしました。

今後の課題 -2- 機材トラブル

映像を上映している際に画面左隅に小さく警告文が数秒表示されるという機材トラブルが発生しました。リハーサルの時に気がついてプロジェクターの製造元に問い合わせて、表示されないように設定したはずが、本番でも3秒ほど表示されてしまいました。

まったく気がつかなかった方もいましたが、気がついたお客さんもいらっしゃると思います。
原因を究明して、しっかり反省しないといけないところです。

借りると高価なプロジェクターを持っているのは僕の強みでもありますが、機材の故障や今回のようなトラブルに見舞われた際に機材の替えが効かないというのは大きなリスクだと改めて思いました。
お客様や関係者の皆様には本当に申し訳ありませんでした。

まとめ

いくつか課題はありましたが、実際に公演を観たお客さんからは好評をいただいたので、それが何より の救いです。

また、本番ギリギリまでスタッフが見つからないというトラブルに見舞われましたが、結果的にはブログの読者さんや音声配信のリスナーさんから情報の拡散やメッセージなどの応援をいただき、アシスタントを見つけることができたので、皆さんとのつながりを改めて感じることが出来ました。

ご協力いただいた皆さん、本当に有難うございました。

そして、またどこかでお会いできることを楽しみにしています!!

 


最後までお読みいただき、有難うございます!

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