映画批評の文字起こしを読むのが好きなんです

ライムライトの仕事部屋
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YouTubeやTiktokなど、映像コンテンツが溢れまくる現代は、まず目の可処分時間がなくなり、次に音声配信を聴きまくるようになって、耳の可処分時間の取り合いが起きています。

僕の音声配信もご多聞に漏れないわけですが、そうなってくるともういちど活字メディアが復権してくる可能性もあるかもしれません。

映像も音声配信も早送りはできますが、内容を理解するにはそれにも限度があります。

ところが、文字情報は読むのが早い人はとても短い時間で効率的に情報を吸収することができます。

じつは僕も、映画の作品批評は文字起こしを読むのが好きなのです。

ライムスターのムービーウォッチメン』や町山智浩さんの『アメリカ流れもの』など、映画評論家が書いた小難しい文章よりも、もとがラジオなので文章も読みやすいです。

そんな訳で、先日の音声配信ではじめて行なったバレエ公演の感想を文字起こししてみました。

ブログと音声配信、どちらが良かったか、ぜひみなさんのご意見を聞かせてください。

では、さっそく行ってみましょう!

#72 石川県復興支援公演バレエ「ロミオ&ジュリエット」を観ました

遅くなりましたが皆さん、新年明けましておめでとうございます!

ちょっとこの挨拶をするのもギリギリのタイミングかなと思ったんですけど、本日が一発目の音声配信ということで、皆さんいかがお過ごしでしたでしょうか。

「ロミオとジュリエット」公演概要

今日は1月8日、9日、10日で開催された石川県復興支援公演のバレエ「ロミオとジュリエット」の感想についてお話をしようと思います。

考えてみたら、ブログや音声配信を始めてもう1年以上経っていますが、バレエを見に行った感想を話すのは初めてだと思います。よくバレエを見ている人の感想と、僕みたいにあまりバレエを見ない人が舞台を見て感じたことは、また違った視点の話ができると思うので、僕なりの感想を話そうと思います。

作品について

「ロミオ&ジュリエット」はシェイクスピアの傑作作品です。

舞台は中世イタリアが舞台となっており、名門のモンタギュー家とキャピュレット家が争う中で繰り広げられる、両家の子息ロミオとジュリエットの禁じられた恋物語です。

バレエは初めてですけど、原作ももちろん読んでますし、1968年のフランコ・ゼフィレッリ監督の映画、そして1996年のディカプリオとクレア・デーンズが主演した現代版「ロミオ&ジュリエット」、これも見ています。 今回のバレエ版「ロミオ&ジュリエット」では、ロミオ役を企画の主宰者であり、元K-balletのソリストの高橋 裕哉さんが演じ、ジュリエット役はオランダ国立バレエ団プリンシパルのマイア・マッカテリさんと日本人ダンサーの長崎真湖さんがダブルキャストで務めています。振付家はイタリア人のジョバンニ・ディ・パルマさんが担当されています。

まず最初に言いたいのはですね、出演者とスタッフの皆さん、本当にお疲れ様でした!

短期間でこれほどの公演を作り上げたのは、皆さんの努力の賜物だと思います。妻も昨年の秋頃にお話をいただき、本格的な練習を始めることができたのは11月末頃からでした。それまではジョバンニさんが作った「ロミオ&ジュリエット」の映像を見ながら一人でイメージトレーニングをしていました。本格的な稽古はジョバンニさんが来日されてから、正味20日間ほどの間に集中して行い、今回の舞台を迎えました。

まず、プリンシパルからソリスト、コール・ド・バレエまで含めて、ダンサーの皆さんは素晴らしい演技を見せてくださいました。 補足しますと、プリンシパルは主役級のダンサー、ソリストは重要な役でソロを踊ることができるダンサー、コール・ド・バレエは群舞を踊るダンサーのことですが、今回のコール・ド・バレエのダンサーの方々も、それぞれのバレエ団でプリンシパルやソリストを務められている方たちでした。素人目に見ても、その身体能力の高さは明らかでした。

キャスティングについて

高橋 裕哉さんは主演を務められるだけでなく、この公演の主催者としても活躍されました。様々な場所から優秀なダンサーを集め、プロジェクト全体の規模や協賛の集め方など、経営的な手腕も含めて素晴らしいものでした。

お相手のマッカテリさんはジョバンニさんの強い推薦で今回キャスティングされたようなんですけど、 最後、カーテンコールの時にお子さんを呼んでステージに上がられてました。お子さんも連れ添って14歳のジュリエットを演じるという。妻いわく、さすがに身体のキレだったりとかラインがとても綺麗だと言ってるんですけど。

ここがね、僕みたいなバレエ素人にはなかなか難しいところでもあるんですよ。まず言っておくと、バレエにおいては、14歳の少女ジュリエットだったり、「くるみ割り人形」の娘クララ(これも14歳だったかな)、こういう少女役を大人の女性が演じるということがよくあることなんですね。

まぁこれは、もともと少女でやっていたんだけど、結局その技量的にクラシックの技を見せるというところで、やっぱりプロの人に踊ってもらった方が面白いというところからね、成人の女性が演じるということが当たり前という感じになっているようなんです。

でも、ここをはじめて見に来た人が飲み込めるかどうかっていうのは、これね、人次第かと思います。その「人次第」というのは、演じるダンサーの力量次第というところもあれば、見るお客さんの感覚次第というところもあると思います。あともう1点ね、これ後で話しますけど、もしかしたら座る席によるというところもあるかもしれません。

僕みたいにね、そんなバレエ偏差値の高くない人間がバレエを見るときっていうのは、やっぱりそのね、個々のダンサーの力量っていうところよりも、全体のストーリー、このシェイクスピアの作品を非言語のバレエでどういうふうに演出するのか、キャスト同士の関わり合いにどんなエモーションが発生しているのか、どんな化学反応が起きているのか、そういうところをやっぱりね、見ていくわけなんですけど、個人的には今回の「ロミオ&ジュリエット」に関してはですね、高橋さんとマッカテリさんバージョンは、そこまでケミカルが発生しているようなエモーショナルなシーンっていうのは多くはなかった(ゼロではなかったけど)。

でも、もう一人のキャスト、長崎真湖さんバージョンは見ていないのでこれはわからないですけど、もしかしたらこっちの方が二人のアンサンブルだったりケミカルみたいなのは発生してたのかもしれない。これはだから見比べてみないとわからないところです。

鷹栖千香が演じた乳母の役について

そしてね、今回乳母役で出演した僕の妻の鷹栖 千香ですが、これは僕がその裏を知っているから、どういうところで苦労してたか知ってたから少し詳しく話しますと、この乳母役っていうのはただの乳母じゃなくてね、「ロミオ&ジュリエット」自体は悲劇なんですけど、その中で少しコメディタッチのある、コメディリリーフ的な立ち位置で出演しているのがこの乳母なんですね。

役どころで言うと、例えば、「家政婦は見た」の市原悦子さんとかね、樹木希林さんとかね。

ああいう感じの立ち位置なんですよ。で、もともと、ずっとお姫様の役とかをやってきた、ソリストとかプリンシパルを務めてた妻なので、あんまりこういうコメディタッチの役ってやったことなくて、そこが新しい挑戦だったんですね。

加えてイタリア人が行う所作では自然に見える演技も、日本人がやったら不自然に見えちゃうところってあると思うんですね。大げさな身振り手振りとかね、反応(リアクション)とかね、そこらへんを、とても苦労しながら仕上げていったんですけど。

本番を見たらね、(日本人である)妻の演じる乳母をしっかりやれてた。それがすごく良かったですね。

乳母って言うと、たぶん原作でも少なくとも50代もしくは60代ぐらいの年齢が設定されていると思うんですね。原作では、お使いに行って「腰が痛い」とかね、そういう会話とかも出てくるので。

うちの妻40代中盤ぐらいなんですけど、そういう年齢の乳母がいてもおかしくないじゃないですか。

結果的にいろいろ試行錯誤した結果、その年齢のままの乳母っていうのを演じることがうまくいってたように思います。

演出のスタイル

ちょっと他にもキャストの方で話したい人いたんだけど、もうすぐ10分経っちゃいますね(汗)

なんかあの、感想今回さ、踊りの感想というのは初めてじゃないですか。

長くなりますよ。まだ僕演出の話してないもんね。

今からちょっと演出の話しようと思いますね。

まあさっきも言ったけど、踊り一人一人の力量よりもやっぱり僕なんか、どうしても演出の方を中心に見ちゃうんですよね。やっぱりこの「ロミオ&ジュリエット」をバレエでどう表現するかっていう全体の演出を見てしまうんですけどね。

今回のジョバンニさん版の「ロミオ&ジュリエット」が僕にどう映ったかっていうと、イタリア人シェフが作った本場のピザ、そんな感じです。

皆さん、イタリア人シェフが作った本場のピザと、イタリアで修行してきた日本人シェフが作った日本人の好みに合うようにアレンジされたピザと、どちらが好きですか?

僕みたいにバレエに詳しくない人間からするとやっぱりね、日本人の好みに合わされたピザの方が合うんですよ。

そこらへんが、ちょっとこう正直受け入れづらいなって思う演出が結構ありました。

ジョバンニ版「ロミオ&ジュリエット」の特徴

これはね、僕がこのジョバンニさん版以外のイタリア人振付家の舞台を見たことないからね、全体に「イタリアのバレエというのはこういうものだ。」っていうふうに一括りにはできないんだけど、少なくともジョバンニさん版の演出っていうのはね、全体的にタッチが軽くってテンポが早かったです。

そしてなんというか、アクロバティックな動きが多い。

そしてなにより、ボディタッチが結構多め。これが結構、僕は受け入れづらくって。

「日本人はそんなにチュッチュッチュッチュッしないよ」っていうのが正直な感想でした。

外国人のダンサーさんがやるならまだしも、結構ほとんど今回日本人のキャストがやってるんで、まぁちょっとノイズになりましたよね。

正直ね、そういうところあるんですよ。

ボディタッチ一つとっても、意外とイタリアの人がやったらカラッと見えるのかもしれないけど、日本人がやるとちょっとセクハラっぽく見えちゃうっていうね。そしてね、このテンポが早いっていうのは、意外とバレエは冗長に感じることの方が多いんで、テンポが早いこと自体はそんな悪くないんだけど、メリハリがないのはあんまりよろしくないなと思いました。

メリハリがなかった重要シーン

例えばね、ロミオの親友のマキューシオとキャピュレット家のティボルトという人物の決闘するシーンがあるんですよ。マキューシオってのは結構お調子者で、なんか人のことをバカにしたりね、からかったりするみたいなやつなんですよ。

そして、最初はちょっとおふざけで喧嘩してるのがだんだんだんだん本気になって、最後ブスッて刺されちゃう。ここもやっぱり、軽いタッチだったところから最後ブサッて刺されちゃうところの落差が、ドラマを生むわけですよ。ワッて息を飲むような感じ。これがね、なんかぬるっと行っちゃった。だからなんか人の命がちょっと軽く感じちゃうんだよなぁ。そういうところとかは、ちょっと気になりましたね。

あとね、その後マキューシオを殺された(親友の)ロミオが、怒ってティボルトを殺しちゃうんだけど、その次のシーンで、ロミオがティボルトを殺したってことを知ったジュリエットは葛藤するわけです。ロミオが会いに来た時にね。確か(ティボルトはジュリエットにとっての)いとこだったかな、いとこを殺したその本人が自分の愛したロミオなわけです。そこで彼女はロミオのことを叩こうとするんだけど叩けない、っていう良いシーンがあるのね。

そこもなんかぬるっとやっちゃったんですよね。あー、もったいないって思いました。

良かったシーン

逆に良かったのはですね、乳母がジュリエットの様子を見に行った時に、ジュリエットは仮死状態になる薬を飲んでね、死んでる。一時的に死んだ状態になるんです。乳母がそれを発見して、ジュリエットが死んでしまったことに気づくシーン、ここは良かったです。落差が生まれてた。

普段はお調子者というかね、ちょっとこうコメディタッチの乳母がですね、素に戻るというか、自分が愛した、下手したらじつの母親以上に手塩にかけて育てた娘、これが死んだことで世界が崩壊するっていう、この落差。ここがしっかり描けてたので、良かったですね。まぁ、ちょっと身贔屓になるかもしれないけど、たぶん他の人もそれは感じたんじゃないかな。

あと、最後の、仮死状態になったジュリエットの墓に、棺を収めたところにロミオが訪れて、そして最後は自殺というか毒を飲んで死ぬっていう、最後のクライマックスシーンがあるんですけど。

原作は、ロミオが死んでしまったという状態をジュリエットが仮死状態から目覚めて発見して、そして絶望してジュリエットもまた毒を飲んで死ぬっていう展開になるんだけれども、バレエの方の今回のジョバンニさん版の方は、完全に死んでないんですよ。毒を飲んでしまったっていうことを発見するのね、ジュリエットが。で、ロミオはまだ息も絶え絶えないみたいな感じなんですよ。で、最後にロミオとジュリエットはその死ぬ直前に2人で踊るんですね。 これが入ったのはね、すごくロマンティックで僕は良かったなぁと思います。

衣装デザインについて

あともう1点、どうしても受け入れづらかったところがね、衣装です。今回の衣装はたぶん日本で公演をするからということを意識したのか、すごくアジアンテイストなんですよね。このアジアンテイストなのは、ジョバンニさんがこうして欲しいというリクエストだったみたいなんですけど、日本人と中国人の衣装の区別がついてない感じなんですよ。

これさ、たまにハリウッドの映画とかでも、日本人を描く時に、「アジア」っていう大きなくくりで、ごっちゃになっているの見たことないですか?ああいう感じの衣装をね、実際に日本人が着て、しかもほとんど日本人のお客さんがいるところでやっちゃってるっていうのはね、これはあんまりいただけなかったなぁと思います。

これはシンプルに演出家の勉強不足かなと思いますよ。

せっかく、石川県の復興支援公演なんだから、石川県にはすごく綺麗な加賀友禅とか、そういう日本独自の様式があるじゃないですか。そういうのを取り入れたらすごく良かったと思うんですけどね。

例えば、そのアジアンテイストな衣装を使うとしても、記号的に使うんだったらいいと思うんです。モンタギュー家は西洋風の衣装にして、キャピュレット家の方はアジア風の衣装にするとかね。そうすれば舞台上で踊るときもごちゃごちゃしないから、記号的な機能として効果的だったと思うんですけど、そういう工夫もありませんでした。

観客席の視点について

視点の誘導という点でも、一部二部に分かれているんだけど、ごちゃっとしてた印象がありました。

じつは僕、第一部はS席でけっこう良い席をいただいて、前から3番目ぐらいの席で見てたんだけど、逆に手前すぎて、舞台の上手と下手とか、奥と手前とかでいろんなことが起きすぎていて、どこを見ていいんだかわからない状態になったんですね。

二部から休憩時間にちょっと2階席に上がってみたら、2階席がまだ空いてたんで2階席の真ん中ぐらいから見たんです。そしたら結構見やすくて、すっと入ってきた。

さっき言った大人の女性が少女を演じるという違和感も、近くで見た時はやっぱりちょっとあって、それがノイズになったんですけど、2階席から見たらそんなことはなかったんです。だからもう彼女のシンプルな演技力というところに集中できました。

意外とね、バレエ初心者の方は、2階席とかちょっと後ろの方から見て、全体のストーリーっていうのを注目してみるのが、いいのかなと思いました。

まとめ

というわけでね、いろいろ言いましたけど、この「ロミオ&ジュリエット」っていう、もう本当に大定番、演劇界では定番と言われるこの作品を、バレエでどういうふうに料理するかを見れたっていうのは、結構面白い体験でしたね。だから、お話は知っている状態でバレエを見た方が、やっぱり結構見やすいなっていうのはありました。あらすじを勉強してから、ストーリーのあるバレエの舞台を見に行くというのは結構面白いんじゃないかな、そしてあの、ちょっと後ろ目の席でね、っていうふうに思いました。

あと、じつはこの公演のクラウドファンディングを、主催の高橋 裕哉さんが立ち上げています。石川県復興支援のクラウドファンディングを行っていて、1月の末までやっているんですね。概要欄に、このクラウドファンディングのリンクを貼っておきますので、皆さんの中で石川県の復興支援応援したいという方がいらっしゃいましたら、こちらのリンクの方も見てみてください。

僕も微力ながら、支援させていただきました。

というわけで、本日の配信、気に入っていただけましたらいいねやフォローを宜しくお願いします。 コメント欄にご意見ご感想もお待ちしております。 では、本年もよろしくお願いします。


石川県復興支援のクラウドファンディングはコチラ

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