先週末に6歳の息子の運動会に参加してきました。
集団行動が苦手な息子が上手にソーラン節を歌えるのか、リレーで転んだりしないか、親子綱引きで自分はギックリ腰にならないか、ドキドキハラハラ、僕だけではなく、観戦しているおじいちゃんおばあちゃん、兄弟姉妹、きっとどの家族にとってもプロの舞台観劇以上にエンターテイメントで、思い出に残るイベントだったと思います。
「きっとバレエの発表会を観に来る親の心境も、こんな感じなんだろう」と、改めて感じました。
先週はたまたま僕自身がイベントの裏方として働く機会が続き、その直後に運動会を迎えたこともあって、裏方と観客の両方を立て続けに体験したので、今日はバレエ発表会における裏方の価値について、書いてみようと思います。
プロフェッショナルであるほど目立たない仕事
僕が参加した運動会の裏方は、ほとんどが先生方で運営されていました。もちろん、先生方は保育のプロであって、イベント運営のプロではないので、プロのイベント運営を知る身としては気になる点もありましたが、先述した通り、それでもプロの舞台以上に思い出に残る会を作っていただき、まずは先生方には無限の感謝とリスペクトを表します。
その上で、発表会の運営でも意識した方が良さそうなところがあったので、書いておこうと思います。
まず、運動会同様、バレエ発表会を観に来る親の関心はただ一つ、自分の子供です。プロのバレエダンサーによる踊りや全幕ものの舞台、もちろんこう言った演目も非常に見応えのあるものですし、そう言ったバレエ作品に触れること自体、子供たちにも良い影響があるのは間違いないのですが、ぶっちゃけ親の最大の関心は子供の出番です。
「子供の踊る姿を見ることに100%集中することができて、何のノイズも感じない。」
これが発表会の裏方が目指すべき姿だと思います。この状態に持っていくためにはいろいろなことに気をつけないといけません。ぱっと思いついたものから一部を並べてみます。
- 駅やバス停から会場までの導線
- 受付でのやりとり
- 受付から席までの導線
- 作品に没入できる舞台転換、照明演出と音響設計
- 聞き取りやすいアナウンス
- 小さなお子さんが泣いた時の対応
- お金や贈答品の管理
- 緊急時の対応
上記のお客さん対応に加えて、メイクのやり方や衣装の着替え、生徒の待機場所、お弁当の手配など、出演者やスタッフに関わる運営管理も発生してきます。
バレエの発表会で、プロが関与できるのは照明や音響など舞台上で起きていることとアナウンスくらいで、それ以外はバレエ教室の先生方や父母会がケアしなければいけない部分です。運動会と同様、バレエの先生方は踊りを教えるプロであって、ダンサーとして舞台に立った経験はあっても、イベント運営のプロではありません。
先週の運動会では、会場となった中学校の正門が工事中で、入り口を探して中学校を1周してしまったり、体育館のスピーカーが反響して、各演目のルール説明が聞き取りづらかったり、全員床座りが前提で椅子の用意がなく、高齢の方や足の悪い方が立ちっぱなしになったりと、これらはシンプルに経験と知識不足によるものです。
そのほか、撮影するための三脚設置可能スペースがあるにもかかわらず、なぜか三脚を広げてはいけないという、ルールの矛盾もありました。
きっと三脚を広げると場所をとるからと言う配慮だと思うんだけど、そもそも三脚は脚を広げないとカメラを固定できない。こういう場合は、一脚という別の撮影道具を使うか、手持ち撮影のみOKにした方が良いと思う。
だからこそ、事前からの入念な準備と役割分担、コミュニケーションが大切で、年季の入った教室はこう言ったイベント運営の経験値が、子供を通わせる父兄を含めてあります。
僕の親のバレエ教室も、父母会が代々受け継いでいる運営マニュアルが存在します。こういった経験の蓄積は目に見えないところでその教室の価値になっていて、可視化されていないのではないでしょうか。
なぜなら「裏方」とは文字通り良い仕事をすればするほど目立たず、逆にうまくいかないところが目立ってしまう仕事なんです。
では、こういった蓄積のない教室がイベントを運営するにはどうすれば良いでしょう?定石で言えば、自分たちの得意としない領域はそれを得意とするプロを雇うのが良いでしょう。
そんなこと言われても、そんなツテもないし、いくらかかるか分からないから困っているんです。
そうですよね。それができれば苦労しませんよね。
まずどこに連絡すればプロに会えるか分からないし、もしかしたら多額の費用がかかるかもしれません。
そんな時こそ、大切なのは横の繋がりだと思います。縦の繋がりは対価が発生するクライアントとプロの関係だとしたら、横の関係はスクール同士の関係、親同士の関係、地域の関係です。この中でも特に強調したいのが父母会です。なぜなら父母会は子供を発表会に送り出すお客さんの視点と、発表会のスタッフとして働く運営側の視点の両方を持っている存在だからです。
結局、素人が100人集まって考えるよりも、経験者の話を1回聞く方が、どれだけ価値があることか。全部自分たちで解決しようとせずに、横のつながりを持つことの大切さを改めて考えてみる必要があります。
僕の住む杉並区には杉並洋舞連盟という地域のバレエ教室運営者の集まりがありますが、最近は地域の繋がりに価値を見出せず、連盟に加入しない教室も増えてきていると聞きます。経験の浅い教室と、経験値の溜まっている教室の先生や父母会との交流の場を作ることは、こういった連盟や協会、教室のある市区町村が取り組むべき課題かもしれません。
経験を伝える側の教室は、これまで可視化されていなかった教室の価値を改めてアピールできますし、教室ごとの個別最適化は必要ですが、発表会運営能力のボトムアップは地域全体のバレエ文化活性にも繋がると思います。
最後までお読みいただき、有難うございます!
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