16世紀にイタリアからフランスに伝わった「バッロ」。16世紀フランスで初のバレエが披露されますが、舞踊としての様式がはっきりと確立されたのは17世紀に入ってからになります。まずは、17世紀のヨーロッパがどんな世界だったかをご紹介します。
16世紀から続いていた宗教戦争がようやく決着
プロテスタント対カトリックによる宗教戦争は17世紀にヨーロッパ全土へ波及し、1648年まで続く「三十年戦争」となります。
この間に教会の権力は没落して、国王に権力が集中する絶対王政が確立。主権国家が一同に介して三十年戦争の終結を決めた「ウェストファリア講和条約」は世界初の近代的な国際条約と呼ばれています。
太陽の沈まない国が沈み、オランダが金融で世界の覇権を握る
大航海時代に新大陸から大量の銀を持ち込んで大繁栄したスペインですが、皮肉にもあまりに大量の銀を持ち込んだために、銀貨の価値が落ち込み、大インフレーションを引き起こします。
貨幣は多ければ良いって訳じゃないんだ。流通量を適切に管理しないと
価値が下がっちゃうんだ。
さらに、16世紀後半には無敵を誇った艦隊がエリザベス1世率いるイギリスに敗れ、凋落します。
そこで台頭してきたのが元はスペインの属国だったオランダです。オランダは貨幣の価値を適切にコントロールするために、以下の3つの機関を設立します。
・アムステルダム証券取引所:出資者から集めたお金を株に引き換えるところ
・東インド会社:世界初の株式会社(貿易で得た利益を株主に還元)
・アムステルダム為替銀行:ヨーロッパ各地から集まった貨幣をオランダの銀行貨幣にして管理
お金の集約と分配を適切に行えるようにしたことで、オランダは黄金時代を迎え、ウェストファリア条約で正式に独立が認められます。
バロック美術と科学革命
17世紀は芸術分野にも大きな変化がありました。復習になりますが、16世紀までのアートの潮流はどんなものでしたっけ?
ルネサンスが流行っていて、ギリシャ哲学の影響で「美の調和」を目指したんだよね。
変革のきっかけはおなじくイタリアではじまります。ミラノ生まれの芸術家カラヴァッジョがこれまでの静かで調和のとれた絵画から、明暗対比がクッキリとしたドラマチックな絵画を描き、これに影響を受けた若い芸術家たちがヨーロッパの各地に散らばり、レンブラントやルーベンス、ベラスケスに代表される「バロック美術」が流行します。
「バロック美術」の特徴であるドラマチックな表現は教会が発注主なら神の威厳を強化するし、王族が発注主なら王様の威厳を強化することができたんだ。
また、17世紀は科学の発展が著しく、天文学では*ガリレオ・ガリレイやケプラー、「万有引力の法則」を発見したニュートン、思想面ではデカルトやスピノサ、ライプニッツなどが理性を重んじる合理主義を唱えて科学の発展を後押しし、18世紀に訪れる産業革命の礎となりました。
*コペルニクスが地動説を唱えてガリレオが証明するまで、宇宙は地球を中心に回っていると考えられていた。
その中でも
われ思うゆえに、我あり!
の名ゼリフで有名な合理主義哲学の祖、デカルトは意外にも10代に舞台芸術を学んでいて、スウェーデンの女王に頼まれてウェストファリア条約締結を記念した宮廷バレエ「平和の誕生」の台本を自ら*執筆しています。
*「平和の誕生」がデカルトの創作ではないという説もある。
デカルトの名ゼリフは、この世の中が全て幻想だとして、自分が本当に存在しているのか疑問に思った時に、少なくともそんな疑問を抱いている自分がいるのだから、やっぱり自分は存在しているのだ、という考え方。
まとめ
17世紀のヨーロッパの状況は理解いただけましたでしょうか?
17世紀フランス編は今日から4回に渡ります。まず本日はチャートの左側部分についてご紹介しました。
4回目が終わった頃には、チャートの内容がまるッと理解できるよ。
次回はブルボン朝によるフランスの絶対王政と、その中で発展した宮廷バレエについてご紹介します。
最後までお読みいただき、有難うございます!
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