バレエの歴史 17世紀フランス編 -4-

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全4回に渡った17世紀フランス編もいよいよ今日が最後です。

前回はルイ14世がバレエ史に果たした貢献の中から、バレエの体系化と理論化までをご紹介しましたが、今日はおもにダンサーの職業化と専門化についてご紹介します。

王立音楽アカデミーとコメディ・バレエ

王立舞踊アカデミーがバレエの理論面を発展させたのに対して、王立音楽アカデミーは創作面において、ダンサーの養成を行い、バレエダンサーの専門化を進めました。そしてこの王立音楽アカデミーこそ、世界最古にして現在も世界最高レベルのバレエ団、パリ・オペラ座バレエ団の前身です。

マザランが引退してルイ14世の*親政がはじまると王権は安定し、「夜のバレエ」のような大掛かりな宮廷バレエは必要とされなくなりました。

*国王による直接統治のこと

そこで登場したのがコメディ・バレエです。市民の日常的な出来事を題材とした喜劇で、セリフや歌、バレエを組み合わせた新しいスタイルの舞台でした。

「王妃のバレエ・コミック」でも説明したけど、コメディ・バレエも笑えるバレエじゃなくて、たのしいバレエって意味だよ。

コメディ・バレエは、振付ポーシャン、台本モリエール、作曲リュリの3人が協働して多くのヒット作を生み出します。

ジャン=バティスト・リュリ

ジャン=バティスト・リュリは元々ヴァイオリニスト兼ダンサーで、ルイ14世に気に入られ、王立音楽アカデミーの監督に任命されます。

ポーシャンもヴァイオリニスト兼ダンサーで国王の個人教師も務めていたのですが、興味深いのはこの当時のバレエレッスンの伴奏はピアノではなく、ヴァイオリンだったことです。

そういえば17世紀の作家ペローが書いた「シンデレラ」を題材にしたバレエでは、音楽教師がヴァイオリンを弾いてるよ。

てっきりピアニストだとバレエで踊りづらいからヴァイオリニストにしたんだと思っていた。

トラジェディ・リリック

コメディ・バレエと同時期にあったオペラの潮流にトラジェディ・リリックがあります。”Tragedy Lyric”は「悲劇的な歌詞」と訳されますが、かならずしも悲劇的な内容と言うわけではなく、古代ギリシヤ・ローマの神話や英雄叙事詩などを題材にした荘厳で、格調高いオペラを指します。重苦しい内容の多いトラジェディ・リリックにも、気晴らしとしてバレエが挿入されており、重厚な内容はオペラ、軽妙な内容はバレエと言う棲み分けがあったようです。

音楽面におけるトラジュディ・リリックの創始者も、じつはリュリだったんだ。

先駆的な「オペラ・バレエ」と職業ダンサーの誕生

コメディ・バレエとトラジェディ・リリックが合体するような形で生まれた作品スタイルをオペラ・バレエと呼び、18世紀前半に流行しますが、17世紀末においてその先駆けとなる作品が生まれます。オペラ・バレエは、これまでよりも踊りの比重が増えてオペラ(歌)とバレエが対等な関係で上演されました。

バレエパートが増えた反面、場面と場面の繋がりはゆるやかで演劇的な一貫性がなく、場面ごとの派手な演出でお客さんを楽しませていたみたい。

王立音楽アカデミーで上演されたオペラ・バレエは、当初は貴族とプロのダンサーが一緒に出演していましたが、次第にダンサーの育成が進んでプロのダンサーだけが踊るものに変わっていきました。

現在のパリ・オペラ座のプロセニアム・アーチ
scarletgreen from Japan – operagarnier12f, CC 表示 2.0, による

また、ダンサーの専門化に伴い、鑑賞空間にも大きな変化が訪れます。これまで宮廷の大広間で舞台を囲むように鑑賞していた空間が、客席が舞台から切り離された専用の劇場空間に変わりました。

元は同時代のイタリアの舞台空間「プロセニアム・アーチ」(額縁舞台)を参考にしているよ。

当初の職業的ダンサーは宮廷に勤務する男性ばかりで、女性の役も男性も演じていたが、まもなくプロのバレリーナ(女性ダンサー)が誕生します。1681年に上演した「愛の勝利」はオペラ・バレエの先駆け的な作品で、はじめて4人の職業的女性ダンサーが出演し、なかでもラ・フォンテーヌ嬢の優美な踊りが注目を集め、その後も数々の作品で主役を務めたので「史上初のバレリーナ」と呼ばれています。

まとめ

4回にわたってお送りした17世紀のフランスもようやくこれでおしまいです。

17世紀は特に後半に入って、ポーシャンのダンス・デコールやダンサーの職業化、専用劇場の登場など現代のバレエにも通じる大きな変革がいくつもありました。

最後に17世紀フランス編の初回にも出したまとめを載せておくよ。どうかな、

だいぶ内容がつかめたんじゃないかな?

次回はいったん仕事部屋に戻って、一息つきましょう。

 


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