エンターテイメントを巡るAIとの会話 -その3-

ライムライトの仕事部屋
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さて、前回は日本の伝統芸能である狂言を例に、エンターテイメントと芸術の違いを考えてきました。

かつては能のパロディとしてエンターテイメント性を備えていた「狂言」は、時代や風俗の変化とともに当時の文脈を失い、今の人が見ると、「このシチュエーションの何が面白いのか」と主体的に考える余地が生まれたこと、そして時代と共に表現形式が洗練され、ある種の「型」が生まれてきたことにより、現代では能も狂言もどちらも「芸術」として扱われるようになった、という話でした。

さて、以上を踏まえた上で、いよいよ僕とAIの、バレエについての会話を紹介していこうと思います。

バレエは本当にハイ・アートなのか?それともエンターテイメントなのか?

ライムライト
ライムライト

最後に、バレエの話について考えてみよう。
日本でバレエは、オペラやクラシック音楽と同様に「格式のある芸術」いわゆる、ハイ・アートとして位置付けられていると思う。
ただ、これまでの会話を考えると、とくにクラシック・バレエは個人の表現やコンセプトの提示はそれほど重要視されておらず、むしろ世界観や身体性を打ち出しているという点では、じつはエンターテイメントに近いと解釈できるんじゃないかな。

ジピちゃん
ジピちゃん

確かに、日本ではクラシック・バレエが「ハイ・アート(高尚な芸術)」として扱われる傾向がありますが、その本質を考えると、エンターテイメントの側面も非常に強い という視点は重要ですね。

結論として、クラシック・バレエは「アート」としての側面と「エンターテイメント」としての側面を併せ持ち、作品や時代によってそのバランスが変化する と言えます。


クラシック・バレエの本質

① 「個人の表現」より「スタイルの継承」が重視される
  • クラシック・バレエでは、振付やスタイルの厳格な継承が求められる。
  • 例えば、『白鳥の湖』や『くるみ割り人形』では、ダンサーの個性よりも、「正確な技術」「伝統的な演出」「決められた型」が優先される。
  • これは西洋的な「Art(アート)」の概念(個人の独創性を重視)とは異なる。

📌 この点では、クラシック・バレエは「アート」というより「伝統芸術」に近い。

② 「世界観や身体性を打ち出す」点でエンターテイメントに近い
  • クラシック・バレエは、視覚的な華やかさや壮大なストーリーを持ち、観客を惹きつける演劇的要素が強い。
  • 『眠れる森の美女』や『ラ・バヤデール』のように、豪華な衣装やセット、ドラマチックな音楽が魅力の大きな要素になっている。
  • バレエ・リュス以降、ストーリー性よりも「純粋な動きの美」を追求するモダンバレエの流れが生まれたが、クラシック・バレエは依然として「物語を視覚化する」要素が中心。

📌 この点では、バレエは「エンターテイメント」としての性質を持つ。


2. クラシック・バレエを「アート」or「エンタメ」の視点で整理すると?

アート(Art)エンターテイメント(Entertainment)
目的表現や思想の探求観客を楽しませる
個人の表現重要(現代美術、コンセプチュアルアート)そこまで重視されない(型がある)
観客の関与主体的な解釈を求める受動的に楽しめる
商業性必ずしも重要でない興行の成功が重要
クラシック・バレエの要素技術・様式美を極める部分華やかさ、ドラマ性、視覚的魅力

📌 クラシック・バレエは、型の継承を重視する点で「アート」から少し外れ、観客を楽しませる「エンターテイメント」としての要素を強く持っている。


ライムライト
ライムライト

クラシック・バレエは「アート」の文脈よりもむしろ「エンターテイメント」の要素を強く持っていることは分かった。では、なぜ日本ではクラシック・バレエが「ハイ・アート」とされるんだろう?

ジピちゃん
ジピちゃん

これは日本特有の文化的背景が影響していると考えられます。

① 西洋文化への憧れ
  • 日本では、西洋の芸術(クラシック音楽、オペラ、バレエなど)を「高尚なもの」として受け入れる傾向がある。
  • 特に、クラシック・バレエはフランスやロシアの宮廷文化と結びついていたため、日本でも「エリート的な芸術」として位置づけられた。
② 習い事文化としてのバレエ
  • 日本では、バレエが子どもの習い事としてステータスを持つ。
  • これは「庶民の娯楽」というより、「特定の層が学ぶ特別なもの」としてのイメージを強化している。
③ 舞踊全体の地位の違い
  • 日本では、ダンスや演劇が「大衆芸能」として見られることが多い。
  • その中で、クラシック・バレエは「伝統・格式・海外との結びつき」によって「特別な芸術」として持ち上げられやすい。

📌 このような背景から、日本ではバレエが「ハイ・アート」として扱われているが、本質的にはエンターテイメントの要素が強い。


ライムライト
ライムライト

じゃあ、海外、特にヨーロッパでバレエはどう受け取られてきたのかな?

ジピちゃん
ジピちゃん

歴史的に見ても、クラシック・バレエはエンターテイメントの側面が強いと言えます。

  • 17世紀フランスの宮廷バレエ(ルイ14世) → 貴族の娯楽として発展
  • 19世紀ロマンティック・バレエ(『ジゼル』など) → 興行的成功が求められる
  • 20世紀バレエ・リュス以降 → 前衛的な要素が入り、「アート」としての性格が強まる

📌 「クラシック・バレエ=エンターテイメント」でありながら、20世紀以降「アート」としての側面も持ち始めたと考えられる。

ふむふむ。日本にバレエが紹介されたのは20世紀前半だから、ヨーロッパでバレエの「アート」的な性格が強まっていた時代だったんだね。


結論:「クラシック・バレエはハイ・アートか? それともエンタメか?」

クラシック・バレエは、個人の表現を重視する「Art(アート)」の概念には必ずしも一致しない。
世界観の提示、視覚的な美しさ、身体性を強調する点では「エンターテイメント」に近い。
ただし、日本では西洋文化のステータス性によって「ハイ・アート」として位置づけられた。
バレエが「芸術」としての側面を持つのは、20世紀以降のモダンバレエやコンテンポラリーダンスの流れと関係が深い。

ライムライト
ライムライト

ここで先ほどの能と狂言の話に戻りたいと思う。もとは能のパロディーとして生まれた狂言は、時代の変遷とともエンターテイメントから芸術として扱われるようになった。

同じような文脈でエンターテイメント性の強いバレエが、日本に輸入される中で解釈の余地が生まれ、さらに時代の変化も伴って、日本では芸術として受容されたと考えられないかな?

ジピちゃん
ジピちゃん

はい、その整理は非常に論理的で説得力があります!

つまり、「能と狂言の関係」と「クラシック・バレエと日本での受容」の関係には、共通する構造がある ということですね。

1. 能と狂言の関係

  • 当時の狂言(パロディ・娯楽) → 時代の変遷とともに解釈の余地が生まれ、芸術へ昇華
  • 当時の能(格式の高い舞台芸術) → 変わらず芸術として存続

かつては娯楽であった狂言が、時代を経ることで「当時の文脈を知らないと理解できない表現」 になり、結果として芸術的価値を持つようになった。

📌 つまり、当時はエンターテイメントだったものが、時間の経過によって「解釈が必要なもの」となり、芸術へと変化する。


2. バレエが日本で「芸術」として受容された流れ

  • バレエは本来、エンターテイメント性の強い舞台芸術(視覚的な豪華さ・技術的な洗練・宮廷文化の影響)
  • 日本に輸入された際、解釈の余地が生じた(西洋文化としての憧れ、言語の違い、舞踊の伝統の違い)
  • 時代の変化とともに、日本では「芸術(げいじゅつ)」として位置づけられた

📌 日本において、バレエは「解釈の余地がある芸術」として受け入れられ、能と狂言の関係に似た変遷をたどったと考えられる。


3. なぜバレエは「エンタメ」から「芸術」になったのか?

能と狂言の関係と同様に、バレエも日本で「芸術」として受け取られるようになった理由を整理すると:

日本における舞踊文化とのギャップ

  • 日本の伝統舞踊(能、日本舞踊など)は、「型」や「精神性」を重視し、即興性や娯楽性は控えめ。
  • 一方で、西洋バレエは物語性や視覚的な美しさを重視する。
  • そのため、日本では「能」のような格式の高い芸術の側面に近いものとして捉えられた。

解釈の余地が生まれた

  • 能と狂言の関係と同じく、バレエが西洋で生まれたエンターテイメントであったという文脈が日本では希薄になり、むしろ「西洋文化としての美」や「技術的な完成度」に注目が集まった。
  • 結果として、「伝統芸術の継承」という視点でバレエが評価されるようになった。

日本における芸術の受容のされ方

  • 日本では、特に西洋文化が「高尚なもの」として受容される傾向がある(クラシック音楽、オペラなど)。
  • 「伝統的な型を守り、厳格な訓練を必要とするバレエ」は、むしろ芸術的な側面が強調される。

📌 狂言がエンタメから芸術になったように、バレエも「エンタメとしての文脈」が薄れ、「芸術としての文脈」が強まることで、日本では芸術として受容されたと考えられる。


結論:「バレエは日本で狂言と同じ変遷をたどった」

能と狂言の関係と同様に、バレエは本来エンターテイメントだったが、日本に輸入される中で「芸術」として受容された。
時間の経過と文化的なギャップによって、解釈の余地が生まれ、バレエが持つ芸術性が強調された。
日本における「芸術」の概念が西洋的なステータスを重視する傾向も、バレエの芸術化に寄与した。
結果として、日本ではバレエが「エンターテイメント」より「芸術(げいじゅつ)」の文脈で語られるようになった。

まとめ

はい、今日はここまで。

次週以降はいよいよ今回の会話の核心部分に入って行きます。これまで、クラシック・バレエがエンターテイメントよりも「芸術」として日本に輸入された経緯を見てきましたが、日本にはもう一つ特殊事情があります。

それが、日本ではクラシック・バレエよりも先にモダンバレエが流行し、戦後に逆転した、というねじれ現象があることです。

ここを理解することこそ、この会話の最重要箇所であり、僕の祖父の人生や両親のバレエ教室に繋がってくるポイントです。

という訳で、次回もお楽しみに!

 


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