世界のバレエ学校のバレエ以外の課目を比較してみた

ライムライトの仕事部屋
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よく耳にするのが、「日本と比べて海外はバレエの教育制度が充実している」という話です。

海外はバレエのレッスンに加えて、一般教科や、音楽や舞台芸術などバレエに関係する学問を勉強できるので、民間のバレエ教室が大半を占める日本とはバレエ教育にかけられる時間が違うと聞きます。

そこでふと思ったのが

海外のバレエ学校で教わることのできる、バレエ以外の課目ってなんだろう?

ということです。バレエ以外の課目を調べれば、国ごとにダンサーに求める資質がどのようなものなのかが分かる気がしたのです。

というわけで、今回は世界のバレエ学校を代表して、フランスの「パリ・オペラ座バレエ学校」とロシアの「ワガノワ・バレエ・アカデミーで教えているバレエ以外の教科を調べてみました。

さらに、日本との違いについても考えてみたいと思います。

バレエに関係する教科

まずは、両国のバレエに関係する教科について。ここはどちらも非常に似通った結果だったので、以下に課目を列挙します。

  • クラシックバレエ:バレエの基本技術と応用技術の習得。
  • ポワント:トウシューズを用いたバレエの技術。
  • レパートリー:古典および現代のバレエ作品の習得とパフォーマンス。
  • パ・ド・ドゥ:二人で行うバレエの技術。
  • キャラクターダンス:民族舞踊や伝統舞踊を取り入れたバレエの技術。
  • コンテンポラリーダンス:現代舞踊の技術と表現方法。
  • バレエ理論:バレエの歴史、解剖学、舞台芸術の理論。

この中から日本のバレエ教室で習わないことは、キャラクターダンス、バレエ理論といったところでしょうか。コンテンポラリーダンスも日本ではクラシックバレエの教室と分かれていることが多いです。キャラクターダンスに関しては、他国の民族舞踊を学ぶのではなく、日本の民族舞踊、すなわち盆踊りや阿波踊り、神楽やエイサーなどを指します。これらをバレエ教室が定期的に教えているケースは、僕が調べた範囲では見つかりませんでした。

バレエと関係のない教科

「一般科目」と書いたところは国が定める教科で、ここで提供される授業は一般の学生が受ける内容と変わりません。それ以外の部分が独自の内容となります。どちらもだいぶ似通っています。

まず、ワガノワ・バレエ・アカデミーだけにある【美術】は一般科目の扱いです。「芸術の都、パリ」のあるフランスで【美術】が必修科目ではないのは少し意外でした。また、【音楽史】の授業もワガノワ・バレエ・アカデミーだけにあります。パリ・オペラ座バレエ学校も音楽理論の授業があるので音楽史にも触れると思いますが、パリ・オペラ座バレエ学校の方がどちらかというと実践志向なのかもしれません。

【体育】に関してはどちらの学校も一般科目の扱いなのですが、内容がバレエに必要な能力を養うための体操が中心のプログラムのようです。

日本との違い

まず、バレエ学校の在籍年齢はパリ・オペラ座バレエ学校が8歳から18歳まで、ワガノワ・バレエ・アカデミーが10歳から18歳までとなっています。ただし、途中入学も可能で、ヌレエフは17歳でワガノワ・バレエ・アカデミーに入学しています。

日本のバレエ学校はさらに幼い4歳頃から入学してバレエ教育を受けられるところがあります。小中学校は地域の提携校などに通うか、通常の小中学校に別に通う必要があります。さらに高校ではバレエ学校に通いながら通信制の教育を受けて、高校卒業資格が得られる学校もあります。

参考までに、高校の卒業資格を取ることができる、日本のバレエ学校をいくつか紹介しておく。ちなみに僕の妻は13歳から山本禮子バレエ団の付属研究所で寮生活をしながら地域の高校に通っていたよ。

  • 東京高等バレエ学校:海外のバレエ学校と似たような課目を履修できます。民間のバレエ団体と提携し、通信制高校のプログラムを利用して一般教育とバレエ教育を両立させています​。
  • 明蓬館高等学校 バレエダンサーコース:こちらも通信制高校のプログラムを利用し、バレエ教育を提供する民間の学校です​。
  • 山本禮子バレエ団:民間のバレエ教室として運営されており、幼児から大人まで幅広い年齢層のバレエ教育を行っています​。地域の高校の体育コースとしてバレエ団付属研究所で受けるレッスンがプログラムされています。
  • 品川学藝高等学校:日本で数少ない「学業」と「バレエ」の両立をめざす全日制高等学校です。一般教科とバレエの実技教科をバランスよく両方学ぶことができます。

色々と調べた結果、海外の代表的なバレエ団と同じような教科を受けることは日本でもできるようです。しかし、全国規模でみるとやはり少数であり、民間経営のため就学にはお金もかかります。

イチバンの違いは「一般教科の成績が悪くてもバレエの進路に影響しない」点だと思います。

日本で通信制教育などで得られる高校卒業資格は、もちろん成績が悪ければ手に入りませんが、バレエの成績が優秀であれば、国内外のバレエ団に入団するチャンスはあります。

ところが、パリ・オペラ座バレエ学校で一般教科の成績が悪ければ、進学ができず、パリ・オペラ座バレエ団に入団することもできません。ワガノワ・バレエ・アカデミーも同様です。

まとめ

「文武に秀でたバレエダンサーを育てる」という観点でみれば、確かにフランスやロシアの方が充実しているように見えます。一方で日本は、バレエの教育は民間が行い、学校教育は提携校や通信制の学校で他の生徒たちと一緒に授業を受けることから、より多様な将来への選択肢が開かれているということもできるかもしれません。

海外は子供の頃から国が多額の税金をかけて優秀なバレエダンサーを育てるわけですから、大人になってもバレエが社会的に手厚く保護されるのは納得できます。

一方で日本のバレエは国家による手厚い保護はないのですから、バレエ以外の時間をどういった勉強に当てるべきなのか、いち民間のバレエ教室で提供できるものは何か、世界標準を目指すべきなのか、地域に根ざした独自性、ローカルスタンダードに着目するべきか、改めて考えてみる必要がありそうです。

 


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