毎朝パリからの撮影素材を受け取り、その日のうちに編集＆納品。そんなパラリンピックもこのブログを執筆している本日9月8日でお終いです。編集作業は閉会式もあるからもう少し続くけど、なんとか乗り切れそうです。
僕はそもそもスポーツ全般にそれほど興味を持っていない人間なのですが、そんな僕でも編集をしながら気づくパラリンピックの価値があります。今日はそのことについて書こうと思います。
パラリンピックの価値
僕はある企業からの依頼で、連日連夜パラリンピックの編集をしているのですが、そんな僕でもパラリンピックがオリンピックと比べてあまりテレビで放映されないことに対する、配信者であるクライアントの忸怩たる思いが伝わってきます。
たしか以前、村上春樹が「4年に1度、世界中のアスリートたちが集まり、競い合うと言うだけなら、開催国はオリンピック発祥の地であるギリシャにすれば良い」と書いていたのを読んだ記憶がありますが、そうもいかない利権が絡まりまくって、現在のオリ・パラリンピックは行われています。オリンピックに比べてパラリンピックがテレビで放送されないのも、高額な放映権に見合うだけの視聴率が取れない、よってスポンサーも集まりにくい、という放送局側の懐事情が垣間見えます。
かく言う自分も、オリンピックだってろくすっぽ見ていなかったのだから、この仕事をしていなければパラリンピックを見ていたかどうか、怪しいものです。
利権構造とか大きな話を持ち出すと、つい、当事者意識がなくなってしまいますが、たとえば、「あのお店、つぶれちゃったんだ。昔よく行っていたのに残念。」とか言う人がいますが、その原因の一つは最近そのお店に行かなくなったその人本人にもあることは忘れてはいけません。
それでも、こうやって仕事として関わることになったのだから、パラリンピックの素晴らしいところを書いておこうと思います。
それは、普段スポットライトを浴びることの少ない人が、世界中からの注目と尊敬を集めることができ、それによって勇気づけられる同じような環境の人がいること。そして視聴者である僕たちはこう言った人々の存在を認知し、社会を新しい視点で見られるようになることです。
綺麗事に聞こえるかも知れませんが、視力を失った人、両腕を失った人、車イス生活をしている人、こう言った人が「かわいそう」とか「気の毒」という視点以外で、注目を浴びる機会をあなたは思い浮かべられますか？
例えば、車いすテニスを見ていると、足が不自由だから車いすに乗って競技をしているのではなく、車いすに乗らないとこの競技では強みが出せない。つまり、日常的に上半身を使って生活をしている人たちの方が健常者よりも圧倒的なアドバンテージがあることに気付かされます。
車いすテニスの世界では、健常者と障がい者の立場が逆転するのです。
車いすテニスについては説明するより、じっさいに見た方が早いと思うので、以下にリンクを貼っておくよ。
置かれている環境が変化することで、これまでの力関係が逆転する世界観が僕は大好きで、子供の頃はJ・スウィフトが書いた『ガリバー旅行記』に夢中になりました。
ガリバーは小人の国では巨人として扱われ、巨人の国では小人扱い、科学が発達した国では社会性を失い、馬の国ではより道徳的な馬から野蛮人扱いを受けます。
映画『猿の惑星』も人間と猿の立場が逆転した未来の地球を通じて、実社会の差別や格差を浮き彫りにした作品です。
これらの作品は、今僕たちが暮らしている社会も、見方を変えれば大きく変わる可能性があることを気づかせてくれます。アートには、そういった気づきを与えてくれる力があります。
パラリンピックも、普段みなさんが何気なく暮らす社会への視点を変えるキッカケとして見ると、新しい発見ができるかもしれません。
まとめ
みなさんがこのブログを読む頃にはパラリンピックは閉会しています。今日の記事を読んでパラリンピックに興味を持った人のために、パラリンピックの公式チャンネルを最後にご紹介しておきます。
（あ、僕が編集したやつではないです💦 ）
パラリンピックに出場しているアスリートたちは、同じ競技をしているという以上に、同じような障害を抱える者同士です。彼ら彼女たちが切磋琢磨している姿を見ると、もしかしたらオリンピック以上にパラリンピックは国境を超えた平和の祭典を体現しているのかもしれないと思えます。
最後までお読みいただき、有難うございます！
ブログは毎週火曜・金曜日、音声配信の「ライムライトのつぶやき」は
水曜・土曜日の朝7時に更新しています。
Xをフォロー、もしくはfacebookで「いいね」を押して頂けると、
ブログを更新したタイミングでX（旧Twitter）からお知らせします。
皆さんからのご意見・ご感想もお待ちしています。
コメント