バレエ「鷹の泉 2024 -獏の青-」AI活用術

ライムライトの仕事部屋
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いよいよ来週金曜日に迫ってまいりました、舞踊作家協会30周年公演。東京にお住まいのみなさん、チケットはもうお求めいただけましたか(笑)?

この公演で僕の父、執行伸宜の作品《鷹の泉 2024 -獏の青-》が上演され、僕も映像制作及び当日の映像オペレーションで参加することになりました。

今回の映像はすべてAIを用いて作成することは前回のブログで発表しましたが、着々と制作が進んでいますので、今日はその一部を皆さんに紹介したいと思います。

やってみてうまくいったこと、いかなかったこと

まず、やってみたけど、うまく行かなかったことを紹介します。
前回は動画を生成する元になる、AIで生成した砂漠のふたつの静止画像を紹介しました。

結論から言うと、このふたつの静止画像はボツになりました

まず、ボツになった砂漠の映像をご覧ください。最初の30秒くらい見てもらえれば十分です。

静止画の時は良いと思ったんだけど、いざ動かしてみるとずっと同じ絵が続いて単調だし、なんだか動きもぎこちない。グラフィックもなんだか一昔前のゲームみたい。

今回はRunwayという生成AIを用いて動画を作っていて、はじめに10秒の動画を出力し、そのあと10秒ずつ延長して最長40秒までの動画を作成できるのですが、この延長作業が思ったよりスムーズにいきませんでした。

この砂漠のシーンは主人公の青年、獏が美しい鷹と出会い、鷹に導かれて不思議な泉にたどり着くまでの道のりを表現しています。そこで、以下の2つの変更を加えました。

  • 砂漠から荒野、荒野から森と、風景を変化させて目的地に近づいていることを示す。
  • AIに参考画像を与えるのではなく、テキストだけで指示を与えて、AI自身にグラフィックを作成させる。

一つ目の変更はひとつのイメージを長く引き伸ばすのではなく、別の映像に乗り換えることで単調さを回避すること、二つ目の変更は見本を用意せずに、AIのポテンシャルを最大限に引き出すことが目的です。

プロのグラフィックデザイナーさんに仕事を頼む時も、こちらで見本を提示する場合と、ある程度のイメージだけ伝えて、あとはデザイナーさんの力量にお任せすることがあるけど、それといっしょ。

上記の変更を踏まえて再度生成した動画がこちら。

グラフィックの質が向上して、だいぶ飽きの来ない映像になったと思います。ちなみに音楽は著作権の関係で雰囲気の似た曲に差し替えてあります。

舞台上で映像を使うということ

そして、二つの目の泉の映像。上の静止画を元に生成した動画がコチラ。

こちらは美しい鷹を追って、獏がたどり着く神秘的な泉です。砂漠の映像と違って、あまり動きがないので、いくつか不自然な箇所はあるものの、ステージ上ではそれほど気にならない映像が出来上がりました。つまり、AIに参考となる画像を提供して、動画を生成してもらう方法が上手くいったワケです。

この映像が不採用になったのは、映像そのものの欠陥ではなく、別の理由があります。

それは、このシーンの踊りでリフト(ダンサーを持ち上げて肩に乗せる)があるため、映像を大きく映せない、という理由です。

リフトした時にプロジェクターの光がダンサーに当たらないよう、映像のサイズを小さくして投影する必要が出てきたのです。大画面でこの映像が出れば、観客に閉ざされた秘境にたどり着いたような印象を与えることができますが、映像のサイズが小さいと、舞台に占める泉の面積が小さ過ぎて、観客に泉の印象を伝えきれません。

そこで、泉がより大きく描がかれている、以下の静止画をAIで生成しました。

この静止画を元に生成した動画がコチラ。なお、こちらも音楽は著作権の関係で差し替えています。

多少の手直しは必要なものの、前の映像よりも泉の青の印象が強くなり、木漏れ日や、風にそよぐ木々が神秘的な雰囲気を伝えています。

まとめ

はたして、AIの使用は僕の創造性を制限しているでしょうか?

正直に言って、ありもののストックフッテージをつなぎ合わせていたときよりも、AIとの対話の中から生み出したこれらの映像の方が、僕にとってはよほどクリエイティブな体験になりました。

今日ご紹介した映像の他に、青年獏を導く青い光など、まだ未公開の映像があります。

コストの面で考えても、このくらいの質と量をプロのCGデザイナーに発注したら、10万円以上かかっても不思議ではありません

実際にかかった費用は、1年間のRunway使用料144ドルと、トライ&エラーで発生した追加クレジット30ドルをあわせて、およそ27,000円です。

予算の限られた舞台映像の制作においては、コスト面でもかなりのアドバンテージを出せたと思います。

今日ご紹介した映像が舞台上の踊りとどのような化学反応を起こすのか、ご興味をお持ちの方はチケットをご購入いただき、ぜひご自身の目で確かめてみてください。


■公演情報

舞踊作家協会連続公演第237回 30周年記念公演
  • 開催日:2024年11月1日(金)開演時間19時00分(開場18時30分)
  • 場所:会場ティアラこうとう 小ホール
  • 料金(全席自由):一般 3,000円  友の会 2,700円  江東区民 2,800円

舞踊作家協会の公演情報およびチケットのご購入はコチラ

 


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