情報を集める時に気をつけること

ライムライトの仕事部屋
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18日に公開した、「福田村事件と現在 -後編-」が映画「福田村事件」に出演されていた水道橋博士にリポストしていただいたおかげで、たくさんの方に見ていただきました。

この記事のまとめで、集団化による同調圧力から逃れる手立てとして、ひとつのコミュニティで生きると内部の同調圧力に流されてしまうので、異なる価値観のコミュニティをいくつか持つことが大切だと書きました。

これは情報を集める時にも大切だと思いますので、今日は情報の集め方について解説します。

ダンサーにとって「バランス」は大事だよね。バランスは踊りだけじゃなく、情報の集め方や、ものの考え方にも同じくらい大切なんだ。

フィルターバブル

「フィルターバブル(Filter Bubble)」という言葉をご存知ですか?

これは、インターネットで検索するアルゴリズムが、ユーザーが見たくないような情報を遮断する機能(フィルター)のせいで、まるで「泡」(バブル)の中に包まれたように、自分が見たい情報しか見えなくなることを指します。

FacebookやX(旧Twitter)などのSNSを含め、ネット上で目に付く情報は、使っている人の検索履歴やクリック回数、友達リストなどを分析して出てくるものなので、その人の趣味嗜好にあった情報だけが集まり、結果として情報の多様性が失われてその人が持っているバイアス(偏見)が強化されてしまう可能性があるのです。

フィルターバブルに陥らないためには以下のような方法が有効だとされています。

  • 複数の情報源を利用する
  • 自分の視点と異なる立場の意見を意識的に収集する
  • プライベートブラウズ機能を使う
  • メディアリテラシーを向上させ、フェイクニュースを見抜く力を養う
  • オフラインの活動を重視する

プライベートブラウズ機能はブラウザによって、シークレットモードなどとも呼ばれますが、要するにブラウザを閉じた時に過去の検索履歴などを自動で削除する機能です。

メディアリテラシーを養うには、真偽が怪しい情報は1次情報(情報の出典元)をあたる癖をつけると良いと思います。よくあるのが海外情報を翻訳したネットニュースで、出典元をたどるとオカルトサイトや企業の広告サイトなどに行き着くことがあります。また、最新の科学調査と思いきや、一部の企業が依頼したものだったり、調査の規模が小さすぎるものだったりします。一次情報をあたるのが面倒でも、せめてその情報がどこから来たものかだけでも把握しておくと良いでしょう。

例えば、大手の新聞社でもフジサンケイグループや読売新聞と、朝日新聞では情報の扱い方が異なるので、それぞれの特徴を知っておくと良いよ。

オフラインの活動とは、情報をネットや新聞のみに頼らず、信頼に足る様々な人と交わることで集めることです。ただ、ここには注意点もあって、その情報源となる人が同じ職場だったり同じ環境に身を置く人だと、オフラインの情報にもフィルターバブルが発生する可能性があります。

松本俊夫が教えてくれたこと

もう一つ大事だと思うことを付け加えると、それは情報の伝え方です。

松本俊夫氏は2017年に85歳で亡くなった映像作家で、数々の実験的な映像作品を作り出し、商業映画では当時19歳だったピーターをデビューさせた「薔薇の葬列」(1969)が有名です。僕にとっての映像の師であり、一度だけ専門学校にゲストでいらっしゃった松本先生の授業に参加して自分の作品を手渡したことがあります。そんな松本先生の著書「映像の発見」において、戦後の左翼映画、とくに民主主義映画運動を次のように批判しています。

しかしここで大切なのは、彼らの現実にたいする主体と表現の関係が、戦争中の戦争宣伝映画のそれと、その本質的なあり方においてほとんど変わっていないという事実です。(中略)あのおそるべき破壊と荒廃の戦争体験を、まさに内部の挫折と崩壊の問題として反芻し、その重みに耐えて疎外の回復に生きようとする作家の主体的な格闘がないのです。
松本俊夫(著)「映像の発見」より

つまり、本来戦争を批判する立場の左翼系映画人にしても、批判対象を絶対悪とみなし、こちらの正当性を主張するやり方は対戦国を「鬼畜米英」と呼んで戦意高揚を叫んでいた戦中メディアのやり方となんら変わりがなかったということです。そこに作り手自身の反省が微塵も感じられないと批判しているのです。

これはネット上で匿名で誰かを一方的に批判したり、書き手ではなく出版元しか掲示しない現代のメディアのあり方にも通じる問題です。

まとめ

僕はスピリチュアルなことを否定しませんが盲信してもないし、現代の科学が絶対で森羅万象が説明できるとも思っていません。

人間は、かつては「すべて神の御業(みわざ)」と信じられていたことの多くを、言葉を獲得して世代を越えて情報を伝えることでヒトが解決可能な問題にして来ました。

そのためにまずは「知る」という態度が大事で、一方で「知ったところまでしか知らない」という認識を持つことも重要なんだと思います。

「あいつは殺人者だ」「あいつはカルト教信者だ」「あいつはネトウヨだ」「あいつは左翼だ」

このような態度は、相手を自分が理解できるカテゴリに整理して知ったつもりにするだけで、本質的に「知る」という態度とは異なります。「知る」という態度は、相手の中に共通する自分を見出す行為です。

映画や本、アニメーションでも、一見どうしようもない悪人やダメ人間でも、そのキャラクターに感情移入することがあるよね。きっとそれは自分自身の何かが「共鳴」するからだと思う。

しかし、人は自分のことだって「知ったところまでしか知らない」のです。人間は自分のこともよく分からない、不確かな存在だからこそ、「絶対的なものなど存在しない」と言う謙虚な態度が大事なのだと思います。


最後にお知らせをさせてください。10月1日までスタジオアルマ第3回公演「ラヤの夢」の配信映像をご覧いただけます。僕が6つのアングルから撮影した映像を編集した、舞台とは一味違った魅力の詰まった映像作品です。

いよいよ配信チケットの販売期間が9月25日の深夜0時までと迫っております!

ご興味をお持ちの方はお早めにご購入ください。
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