今日からバレエの歴史シリーズも後半に突入です。まずは19世紀ヨーロッパの情勢をご紹介します。
産業革命がヨーロッパ中に広まり、欧米列強時代に突入
ヨーロッパの歴史だけを紹介していると、世界の中心はずっとヨーロッパにあったような錯覚を覚えますが、さにあらず。18世紀の中国は多民族国家の清王朝が「盛世」と呼ばれる空前の繁栄を迎え、総人口は3億人*に達しており、オスマン帝国は十字軍を退けて20世紀に入るまで地中海周域を統治していました。
*18世紀のヨーロッパの推定総人口は1億人。
しかし、18世紀にイギリスで始まった産業革命が19世紀に入るとヨーロッパ各国に広まり、ヨーロッパ各国は急激に力を蓄えます。工業化による産業構造の変化は資本主義を発展させ、経済・軍事力を向上させたブルジョワジーと呼ばれる新しい資本家やエリート軍人などの特権階級が生まれます。
フランスの動乱期
フランス革命以後のフランスはコロコロと政権が変わる動乱期です。以下にざっと流れを書きます。
・イギリスと同じ立憲君主制でスタート
・ルイ16世を処刑して共和制になる
・ナポレオンが出てきて帝政に移行
・ナポレオンが失脚してブルボン王朝が復活
・7月革命で国民が選んだ王様に代わり立憲君主制
・2月革命が起きて共和制に
・選挙で選ばれたナポレオン三世が帝政を復活
・普仏戦争に負けて再び共和制に
復習になりますが、フランス革命以降は貴族の贅沢できらびやかな文化への反発から、啓蒙主義に影響されギリシヤ・ローマ時代の絵画に学ぶ、非常にアカデミックで真面目な新古典主義が流行りました。しかし、数々の動乱を経て人々の意識にも変化が生まれ、それが芸術にも影響を及ぼします。
ロマン主義の流行
ロマン主義の「ロマン」はロマンティックと語源が同じで、国の公文書を書くときに使われていた文語のラテン語に対して、人々が口語としていた使っていたロマンス語というのがあり、恋愛話など口語で話されるような内容に対して「ロマンティック」という形容詞がつきました。
昔から日本でも漢文とひらがなが使われていて、和歌で恋愛を詠むときはひらがな、国の公文書とかは漢文で書かれていたから、ワリと理解しやすいんじゃないかな。
以下、新古典主義のカウンターカルチャーとして生まれたロマン主義の特徴をそれぞれの代表作を比較しながらご紹介します。
テーマは古典より今、起きていること。
革命が起きている最中に、昔の出来事を描いている場合じゃないよね。「ホメロス礼賛」は古代ギリシャが舞台で「民衆を導く自由の女神」はドラクロワが生きていた時代の7月革命が題材になっている。それまでは現代を扱うのは肖像画くらいだったんだ。
異世界あこがれが入る
*ニューヨークにある自由の女神は独立運動を支援したフランス人の募金によって贈呈され1886年に完成した。
静 対 動
調和を重んじる新古典主義は静的で安定した構図。登場人物全員にピントがあっていて肌の質感もなめらか。対してロマン主義は筆のタッチをわざと残すような荒々しい筆致。絵の構図も動的でダイナミック。こういった構図の変化はルネサンス期からバロックに移る時にも見られたね。
まとめ
はい、今日はこれでおしまいです。
19世紀の時代背景とロマン主義のムーブメントについてご理解いただけましたか?個人的にはロマン主義って当時キレッキレの「現代アート」だったんだと思います。なにせ、それまで貴族や神様を描いていたのが、急に現代をテーマにした異世界ものを描きはじめたのですから。やはり2大革命で社会の構造が大きく変化したことが影響しています。
そしてこのムーブメントがバレエにも及んで、次回紹介するロマンティック・バレエへと繋がっていきます。
最後に今日の内容のまとめを載せておくよ。
最後までお読みいただき、有難うございます!
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